加圧トレーニングと足関節捻挫
2023.11.30
加圧トレーニングと足関節のリハビリについて考察してみます。
アスリートや一般の方の外傷として特に多いのが足関節の捻挫です。
受傷直後においては安静、冷却、固定、挙上等のRICE処置が標準の施術になるのですが、急性期を超えたあたりから運動療法を加えていきます。
その場合において、効果的な運動療法について海外の論文から考えてみます。
原題)Blood flow restriction training improves the efficacy of routine intervention in patients with chronic ankle instability
「加圧トレーニング(BFRトレーニング)は、慢性的な足首の不安定性を持つ患者における日常的な介入の有効性を向上させる」
という論文の紹介です。
米国では、毎年約200万件の急性足首捻挫が発生し、そのうちの急性外側足首捻挫患者の70%がCAI(慢性足首不安定性)を発症する可能性があります。
CAI患者は、捻挫-不安定-捻挫のサイクルに苦しむ傾向があり、足関節に二次的な損傷を引き起こし、効果的なリハビリテーション介入がない場合、足関節軟骨の摩耗が繰り返され、外傷性関節炎を引き起こすことさえあり、患者の日常生活に深刻な影響を及ぼします。
この研究では、慢性足首不安定症を持つアスリート16人が、管理下リハビリテーションに加圧トレーニング(BFRトレーニング)を加えたグループ(BFRトレーニング+リハビリテーション)とリハビリテーションのみを行うグループにランダムに割り当てられました。
両グループは4週間にわたり週3回の管理下リハビリテーションを受診。
BFRトレーニング+リハビリテーショングループは、従来のリハビリテーションプログラムに加えて、大腿部の近位に80%の動脈閉塞圧を適用するカフが装着されましたが、リハビリテーションのみのグループはリハビリテーション+偽のBFRトレーニングを受けました。
介入前後の4週間で、等速筋力、筋肉の断面積、Yバランステスト、サイドホップテスト(SHT)を測定。
4週間の介入後、BFRトレーニング+リハビリテーショングループは足関節の底屈筋と外転筋の筋力、腓腹筋の断面積、SHTのタイムパフォーマンスにおいて、トレーニング前およびリハビリテーションのみのグループと比較して有意な改善を示しました。
しかし、動的バランスに関しては両グループ間で有意な差は観察されませんでした。
この結果は、4週間の管理下リハビリテーションと加圧トレーニング(BFRトレーニング)を組み合わせることが、従来のリハビリテーションだけに比べて、筋力とサイズ、機能的パフォーマンスの向上により効果的であることを示しています。
この情報は、CAIを持つアスリートや一般の足関節捻挫を多発する方にとって、リハビリテーションプログラムを開発・設計する際に、重要な意味を持つ可能性があります。
この論文から、加圧トレーニングの積極的な介入が足関節捻挫の再発防止、また足関節が捻挫によって緩むといった症状を緩和させるのに役立つといえそうです。
注)Blood flow restriction training improves the efficacy of routine intervention in patients with chronic ankle instability
Sports Medicine and Health Science Available online 23 November 2023
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